玄米と米糠(胚芽・表皮)を麹菌で発酵させた食品FBRA(ふぶら)の学術研究
FBRAにはマウスの炎症性発がんの転移能力獲得を抑える働きがあることが示されました。
※この結果は直ちにヒトに適応できるものではありません
FBRA摂取による炎症性発がん抑制とその作用機序
Prevention of tumor progression in inflammation-related carcinogenesis by anti-inflammatory and anti-mutagenic effects brought about by ingesting fermented brown rice and rice bran with Aspergillus oryzae (FBRA)
Nemoto H. et al., J. Funct. Foods, 88, 104907 (2022).
FBRAはマウスの炎症性発がんを予防する可能性が示されています。詳しくはこちら
その発展研究として、炎症性発がんの転移能力の獲得に対するFBRAの効果を調査しました。
悪性度の極めて低い腫瘍細胞(QR-32細胞)を染み込ませたゼラチンスポンジを、マウスの皮下に移植すると炎症を誘発し、その後に腫瘍が形成されます。
まずは、基礎食、基礎食に5%のFBRAを加えた餌、基礎食に10%のFBRAを加えた餌をあらかじめ摂取させたそれぞれのマウスに、腫瘍細胞とゼラチンスポンジを皮下移植し、がんの発生率を調査しました。この結果、FBRAを摂取したマウスでは、腫瘍の発生率が減少しました。
*p<0.005
マウスA基礎食を与えたグループ
マウスB基礎食にFBRAを5%加えた餌を与えたグループ
マウスC基礎食にFBRAを10%加えた餌を与えたグループ
続いて、それぞれのグループで発生した腫瘍細胞を取り出し、異なるマウスに移植して、がんの転移の有無を調査しました。その結果FBRAを摂取しているグループで発生した腫瘍細胞を移植されたマウスではがん転移の発生率が減少しました。
*p<0.05 **p<0.001
マウスA基礎食を与えたグループ
マウスB基礎食にFBRAを5%加えた餌を与えたグループ
マウスC基礎食にFBRAを10%加えた餌を与えたグループ
「がん」とは、細胞増殖が自律的に制御されなくなった細胞の集団のなかで、周りの組織に悪影響を与える細胞集団のこと。「悪性腫瘍」とも呼びます。また、周りの組織に悪影響を与えないものは「良性腫瘍」「異形成」「ポリープ」などと呼ばれています。
多くのがんは正常な組織から突然発生するわけではなく、「前がん病変」や「良性腫瘍」を経て段階的にがん化すると考えられています(多段階発がん説)。「前がん病変」はある特性の遺伝子に突然変異が生じて発生します。この細胞に更に突然変異が起こり、遺伝子の異常が蓄積することで、「良性腫瘍」を経て「悪性腫瘍」へと進行すると考えられています。
人は通常に生活していても、毎日数千個単位で遺伝子の突然変異が生じていると言われます。しかし健康な人の場合は、細胞の自己修復や免疫系による排除が行われるので、直ぐにがん化する訳ではありません。
しかし、一度がん化するとその後の経過は早く数年で進行がんとなり転移を起こします。
※形式上順番に記載していますが、異形成と上皮内がんはしばしば共存するので、両者の間は必ずしも明瞭な区別がつけられない場合が多いです