玄米と米糠(胚芽・表皮)を麹菌で発酵させた食品FBRA(ふぶら)の学術研究
FBRAに含まれる麹菌体が炎症を抑える効果を発揮していることが示唆されました。
※この結果は直ちにヒトに適応できるものではありません。
FBRA摂取による炎症性発がん抑制とその作用機序
Prevention of tumor progression in inflammation-related carcinogenesis by anti-inflammatory and anti-mutagenic effects brought about by ingesting fermented brown rice and rice bran with Aspergillus oryzae (FBRA)
Nemoto H. et al., J. Funct. Foods, 88, 104907 (2022).
FBRAは炎症性細胞の浸出抑制による、炎症性発がんの予防作用が期待されています。詳しくはこちら
この炎症性細胞の浸出を抑える効果は、FBRAの主原料である発酵前の米糠が持つ効果なのか、もしくは麹菌による発酵によって生まれている効果なのかを調査しました。
ゼラチンスポンジを、マウスの皮下に移植すると炎症を誘発しゼラチンスポンジへ炎症細胞が浸潤します。あらかじめ基礎食、FBRA食、麹菌体食、米糠食を摂取させたそれぞれのマウスに、ゼラチンスポンジを皮下移植した後に、ゼラチンスポンジ内の炎症性細胞の数を調べました。
この結果、FBRAと麹菌体食を摂取したマウスでは普通食を摂取したマウスに比べて、炎症性細胞の数が有意に抑えられていました。一方で、米糠食を摂取したマウスではその効果は見られませんでした。
*p<0.05 **p<0.001
マウスA基礎食を与えたグループ
マウスB基礎食にFBRAを加えた餌を与えたグループ
マウスC基礎食に麹菌体を加えた餌を与えたグループ
マウスD基礎食に米糠を加えた餌を与えたグループ
細菌による感染・外傷など身体が有害な刺激を受けた時、傷害から体を防御しようと免疫応答が働きます。その際に生体に出現する現象を炎症と呼びます。主な症状には下記の5つがあります。
※(1)~(4)を「炎症の4徴候」、(5)を含めて「炎症の5徴候」とも呼ばれています。
マクロファージやマスト細胞は、傷害・異物を見つけると「炎症性サイトカイン」という物質を作ります。これを感知した血管上皮細胞には、血中の免疫細胞を呼び寄せる「シグナル」ができます。
「シグナル」に触れた血中の免疫細胞は、血管上皮細胞の間を通り抜け、傷害部分に集まり、有害物・異物を攻撃します。
生体内外からの様々なストレスにより、炎症が起こります。炎症が起きた細胞には「活性酸素」などが発生します。これらの物質は、遺伝子に異常を引き起こすため、がんを抑制する遺伝子にも異常を引き起こし、がんの発生に繋がると考えられています。さらに炎症時に作られる「炎症性サイトカイン」も、がんの増加や転移などを促進すると考えられています。
炎症から発がんに移行する例としては、潰瘍性大腸炎による大腸がん、肝炎ウイルスによる肝発がんなどがあります。